1. 行政処分の内容
金融庁は、東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)に対し、保険業法第132条第1項に基づき業務改善命令を発出した。
改善命令の主な内容は以下の通り:
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法令遵守と管理体制の強化
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個人情報保護法や不正競争防止法を遵守するための管理体制の整備
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保険代理店および出向社員の顧客情報管理体制の強化
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経営リスクを適切に管理できるガバナンス体制の確立
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業務改善計画の策定・実施
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コンプライアンス強化や顧客保護を重視する組織風土の醸成
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出向社員の管理体制の見直し(不適切な情報共有を防ぐ)
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経営管理の強化
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外部専門家の関与
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改善計画の策定・実施に関し、専門家によるレビューを受ける
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経営責任の明確化
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報告義務
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2025年5月30日までに業務改善計画を提出し、直ちに実行
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3か月ごとに進捗を金融庁へ報告
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2. 行政処分の理由
東京海上日動では、個人情報保護法や不正競争防止法に抵触する可能性がある行為や、それらに関連する管理体制の問題が確認された。
主な不適切行為:
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個人情報の漏えい・不適切な取扱い
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代理店が、保険契約に関する情報を他の保険会社と共有(約100万件の漏えい)
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出向社員が、出向先の顧客情報を無断で東京海上日動に送付(約12万件の漏えい)
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問題の背景
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乗合代理店(複数の保険会社の商品を扱う代理店)との慣習的な情報共有
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出向社員が会社の業績向上を目的に情報を不適切に利用
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2014年以前から長期間にわたり行われていた
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コンプライアンス意識の欠如
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代理店や社員の中に「違法かもしれない」という認識がありながら、是正されず長年続いた
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出向者の中には「業績向上につながる」として故意に情報共有した者もいた
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3. まとめ
東京海上日動は、長年にわたり個人情報を不適切に取り扱い、経営戦略として出向者を活用しながらも適切な管理を怠ったことが問題視された。金融庁は、コンプライアンス体制の強化や経営管理の見直しを求め、今後の改善策の策定と定期報告を義務付けた。
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